1995年7月– date –
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第三節:屋上と、赤田慎司の言葉【プロローグ】
言葉より先に風が吹く。声をかけられる前に、相手の背中が何かを語りかけてくる。 旅人が社長に呼ばれたと聞いたとき、彼の中にはひとつの予感があった。 それは挨拶でもなく、送別でもなく──たぶん、“確認”だった。 過去と未来をつなぐ中間地点。五階の屋... -
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第二節:たわいもない会話【プロローグ】
日常の中で交わされる何気ない言葉──それは、あとになってから、深く心に残る。 午前八時、いつものように階段を駆け上がってきた宮田の姿を見たとき、旅人はふとそんなことを思った。 誰かと何気なく言葉を交わすことが、“日常”を実感させてくれる。だか... -
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第一節:掃除という儀式【プロローグ】
始まりとは、決して派手なものではない。静けさのなかに身を置き、誰に見られるわけでもない行為を、淡々と繰り返すこと。その中で、人は少しずつ、自分の輪郭を確かめていく。 旅人にとっての“始まり”は、掃除だった。入社初日から欠かさず行ってきた一連... -
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プロローグ:最終日、陽の当たる机にて
朝という時間帯には、不思議な神聖さが宿る。まだ誰も手をつけていない風景に、一日の始まりと終わりの気配が混在しているからだ。1995年7月28日、金曜日。神戸の街に差す光は湿り気を含み、蝉の声が遠く近くに重なっていた。風野旅人(24)は、今日も変わ...
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